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資本金の額はいくらにしますか?(中小企業向け特例措置) 特定同族会社の特別税率(留保金課税)の不適用

以前、法人税法などの中小企業向け特例措置について解説しました。

資本金の額が1億円以下の法人には、大法人の100%子会社などの例外を除いて、税務上いくつかの優遇措置が設けられています。

今回はそのうちのひとつ、特定同族会社の特別税率(留保金課税)の不適用についてお伝えします。

留保金課税とは?

たとえばあなたが自分の会社(資本金の額が1億円超とします)の株式を100%保有している経営者だとして、その会社がとても儲かっているとします。

自分への報酬を役員給与として多く支払いたいところですが、所得税の最高税率は45%です。一方で法人税等の実効税率は30%前後ですので、将来のことも考えて役員給与の金額は少し抑え、いったん会社に内部留保しておくことにしたとします。

留保金課税とは、その留保した金額に対してさらに10%から20%の税率で法人税を課すというもの。

一定の算式で計算した後の留保金額に対する10%から20%ですので、単純に税引後利益の10%から20%がまた課税されるというものではありませんが、それでも法人税がいちど課されたあとの利益にまた課税される、一種の二重課税であることに変わりはありません。

大変厳しい税制だと思います。

この税制は、特定同族会社が対象です。

それでは特定同族会社とはどのような会社をいうのでしょうか。

特定同族会社とは?

特定同族会社とは、簡単に言いますと、株主1人が50%超の株式を保有している会社です。

ただし、この「株主1人」には、特殊の関係のある個人及び法人を含むものとされておりますので、家族や親族、その株主が保有する別の会社などが株式を保有している場合には、それらをすべて足してひとつの同族グループとして50%超保有しているかどうかを判定します(法人税法67条1項、2項、法人税法施行令139条の7)。

そしてこの判定ですが、その判定対象の会社の株主に法人がいる場合には、さらにその法人の株主をみて判定します。

ひとつの同族グループが50%超保有しているかどうかを判定できるまで、上へ上へと資本関係図をさかのぼっていくわけです。

またこの判定は、株主が日本人であるか外国人であるか、内国法人であるか外国法人であるかを問いません。

そのため、外国の親会社から情報収集をして、複雑な資本関係図をさかのぼっていったらいちばん上には同じ一族の人たちだけで株式を保有していた、ということもありえるわけで、その資本関係図が国外にまで及ぶとなかなか日本からその全貌を把握することは難しいわけですが、それでも把握しておかないと将来の税務調査で留保金課税の指摘がされ、追徴課税されるリスクがある、というわけです。

では実際に、留保金課税とはいくらくらいの課税がなされるものなのでしょうか。

留保金課税の計算方法

留保金額に対する税額は、以下の金額の合計です。

・課税留保金額(*1)のうち年3,000万円以下の金額 × 10%
・課税留保金額(*1)のうち年3,000万円超1億円以下の金額 × 15%
・課税留保金額(*1)のうち年1億円超の金額 × 20%

*1 課税留保金額 = 当期留保金額(*2) - 留保控除額(*3)

*2 当期留保金額 = 留保所得金額(別表4の48欄②) + 前期末配当 - 当期末配当 - 法人税及び地方法人税 - 住民税

*3 留保控除額 次の①から③のうちいずれか多い金額

① 期末資本金の額×25% - 期首利益積立金額

② 年2,000万円

③ (所得金額(別表4の48欄①) + 受取配当等の益金不算入額 など一定の調整を加えた金額) × 40%

数値例

所得金額:400百万円(留保所得金額も同じとする)

法人税及び地方法人税:100百万円

住民税:15百万円

期末資本金の額:300百万円

期首利益積立金額:100百万円

当期留保金額=400-100-15=285百万円

留保控除額:

①300×25%-100=△25

②20

③400×40%=160

∴160百万円

課税留保金額=285-160=125百万円

留保金額に対する税額=30×10%+(100-30)×15%+(125-100)×20%=18.5百万円

まとめ

以上、特定同族会社の特別税率(留保金課税)についてご説明しました。

資本金の額が1億円以下の法人には、上記の留保金課税は適用されません。

あなたの会社の資本金の額が1億円超で親会社が外国法人である場合には、留保金課税の適用がある可能性もありますので、十分にご留意ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(参考:国税庁HP)

特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書(別表3(1))

別表3(1)記載の手引き

No.2260 所得税の税率

No.5759 法人税の税率

この記事の投稿者:

山本健介 1983年兵庫県加古川市生まれ。現在は大阪市城東区で税理士事務所を開業しています。税理士業界で10年以上、中小企業から上場企業まで会計・税務のお手伝いをしてきました。国際資格の専門校アビタス非常勤講師(USCPAコース担当)。米国公認会計士。お笑い好き。サッカー日本代表を応援しています。中国語勉強中。

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