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その支払利息は損金算入できません!(過少資本税制)

先日、びわ湖を自転車で1周してきました。

米原からスタートして反時計回り、高島市のホテルで1泊、2日目は琵琶湖大橋を渡って米原まで戻りました。北湖だけの約150kmのコースです。

写真は2日目の途中で立ち寄ったラコリーナ近江八幡の外観です。たねやの生どら焼き(いちご入り)がとてもとてもおいしかったです。

ただ、当日は土曜日だったこともあり、建物の中は人だらけの超満員。建物の中にどら焼きを売っているたねやのほか、バームクーヘンを売っているクラブハリエというお店もあるのですが、どちらのお店の前にも長蛇の列。。

夕方5時までには米原に戻らなければならず、両方に並ぶ時間がなかったため、バームクーヘンの方は食べられませんでした。。残念。。

なお、こちらの生どら焼きのお店は株式会社たねやという法人が運営しています。また、バームクーヘンの方が株式会社クラブハリエという法人が運営しており、2つは同じグループ会社です。

外国にもおいしいスイーツはたくさんありますので、自分のスイーツを日本で売りたいという外国人の方もいらっしゃるかもしれません。

話の展開が少し強引ですが、今回もそういった日本で事業を行う方々に役立つお話をできればと思います。

出資か貸付けか

日本で事業を行いたい場合、株式会社などの法人を設立して行う方法があります。

日本では株式会社は1円でも設立できますが、現実的には1円しかなければ何の事業も行うことはできませんので、その法人に資金を注入する必要があります。

その資金を注入する方法としては、出資する場合と貸し付ける場合の2つがあります。

資金を出資する場合には、その日本法人の株式を保有することになります。そして、その法人が事業を行って利益を出せば、配当を得て投資を回収することができます。利益を出していない場合には、原則として配当を得ることはできません。

資金を貸し付ける場合には、その日本法人から利息として投資を回収することができます。利息はその法人が事業で利益を出しているかどうかにかかわらず、毎年(又は3ヶ月に1回、半年に1回など決められた期限ごとに)受け取ることができます。

また、出資をした場合には事業が大きく成長すれば株式を取得した金額よりも大きな金額で将来売ることができる可能性がありますが、一方で事業が失敗すれば出資した金額が1円も返ってこない可能性もあります。貸付金の場合には、もちろん貸倒れのリスクはありますが、事業の成功や失敗に関係なく、貸し付けた金額が返済期限に返ってきます。

投資する側からみてそのような違いがありますが、投資される側、つまり日本法人からみても、出資と貸付け(日本法人からみれば借入れ)には、法人税法上の大きな違いがあります。

それは、支払配当は法人税の計算上費用として扱われない、つまり損金算入されませんが、支払利息は損金の額に算入され、課税所得を減らす効果があるということです。

損金算入の効果

たとえば、あなたは日本国外の投資家で、日本で1,000万円で株式会社を設立して事業を行い、最初の年に200万円の利益が出たとします。

その1,000万円が全額出資だった場合(ケース1)、税率を約30%とすると、200万円に対して約60万円の法人税等がかかります(住民税、事業税を含む)。

残りの140万円のうち、出資の10%を配当として回収すると、あなたには100万円が分配され、法人には40万円が残ります。

これが仮に、1,000万円のうち100万円が出資、900万円が貸付けの場合(ケース2)はどうなるか。

利率を配当の時と同じ10%で考えてみると、まずあなたに90万円が利息として支払われます。

その90万円は損金算入されますので、200万円-90万円=110万円が課税所得となり、その30%として33万円の法人税等が課されます。

残りの77万円のうち、出資の10%である10万円を配当として回収すると、あなたには利息とあわせて100万円が分配されたことになり、法人には67万円が残ります。

あなたにはどちらのケースでも100万円が分配されていますが、法人には900万円を貸付けとした方が、27万円多く残っています。これは90万円の支払利息が損金算入された節税効果(90万円×30%)です。

以上を表にまとめると、以下のようになります。

  ケース1 ケース2
利益 200 200
支払利息 0 △90
課税所得 200 110
税率 30% 30%
税額 △60 △33
差引 140 77
配当 △100 △10
留保額 40 67

過少資本税制

しかしながら、このような支払利息の損金算入を無制限に認めると、どのようなことになるでしょうか。

この方法で事業資金を出資ではなくすべて貸付けによって行うと、日本の外資系企業はすべて借入金ばかりの法人となり、経営上健全ではありません。また、税務当局からみても、出資者が出資をするか貸付けをするかは任意に選択することができるため、出資者からの貸付けは実質的には出資と同じようなものであるにもかかわらず、形式的に貸付けとすることで税収が大きく減ることになってしまうので、うれしくありません。

そのため、日本の税務当局は、過少資本税制という制度を設けて、国外株主に支払う利息の損金算入に制限を設けています(租税特別措置法66条の5)。

具体的には、国外支配株主等の平均負債残高がその国外支配株主等の資本持分の3倍を超えるとき、その超える部分に対応する負債利子等が損金不算入となります。

つまり、上記のケース2の場合、借入元本の金額がその事業年度の間ずっと同じだったとすれば、平均負債残高は900万円、資本持分の3倍は100万円×3で300万円となりますので、その超える部分は600万円。したがって、支払利息90万円のうち、以下の算式により、

90万円×600万円/900万円=60万円

は、損金不算入となります。表にまとめると、

ケース2(過少資本税制適用)
利益 200
支払利息 △30(60は損金不算入)
課税所得 170
税率 30%
税額 △51
差引 59(=110-51)
配当 △10
留保額 49

まとめ

以上のとおり、日本に投資を行う方法として出資と貸付けがありますが、極端に貸付けの比率を増やすことによって租税回避が行われることのないよう、税務当局は過少資本税制を定めています。

このような税制はなにも日本に限ったものではなく、アメリカや中国など他国の税制にもよく見られるものですので、日本以外の諸外国に対して投資を行う場合にも留意が必要です。

なお、上記の数値例のように単純なケースはまれで、実際の検討においては、日本法人の株主の出資関係が複雑であったり、貸付けと返済が期中に何度も行われていたりするケースが多いと思います。そのような場合には、国外支配株主等の定義や平均負債残高の計算方法を詳細に確認する必要がありますので、ご留意ください。

ちなみに、この過少資本税制には抜け穴がありましたが、過大支払利子税制の創設により現在はふさがれております。過大支払利子税制の内容についてはこちらをご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の投稿者:

山本健介 1983年兵庫県加古川市生まれ。現在は大阪市城東区で税理士事務所を開業しています。税理士業界で10年以上、中小企業から上場企業まで会計・税務のお手伝いをしてきました。国際資格の専門校アビタス非常勤講師(USCPAコース担当)。米国公認会計士。お笑い好き。サッカー日本代表を応援しています。中国語勉強中。

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