News & Blogお知らせ・ブログ

AICPA sample test REG – Involuntary Conversion

USCPA試験の受験生向けの投稿です。

前回、AICPA sample testの自動車関連費用の計算問題について解説しました。

今回はTESTLET 4の、Lilac Corp. の問題についてご一緒に考えてみたいと思います。

 

この問題は、有形固定資産の取得価額についての問題ですね。第1問から第3問までありますが、第2問と第3問は解説不要だと思いますので、第1問についてだけ考えてみたいと思います。

まずこの問題ですが、収用により市政府に土地を強制買取されています。その収用、英語ではInvoluntary conversionですが、それが米国税法の第何条に規定されているか、ということをまず知らないと解答できません。1033条と1041条の2択です。

そこまで確認してUSCPA試験に臨む受験生などいるんだろうか。。と思ったのは私だけではないと思います。これは1033条が正解となります。1041条は、配偶者への譲渡では譲渡損益を認識しないよ、といったことが規定されています。

次に、新規取得資産のbasisを計算する必要があります。収用により所有資産が買い取られ、その補償により現金を受領し、その現金により新しく代替資産を購入した場合、その新規取得資産のbasisは、

新規取得資産の取得原価(cost) - 繰り延べられた利得(deferred gain)

という算式により計算されます。この繰り延べられた利得(deferred gain)とは何かというと、例えば本問ではbasis 63,000ドルの土地が強制収用され、その補償として71,800ドルの現金を受け取っています。63,000ドルの土地を71,800ドルで譲渡した、ということなので、会計上の利益、gain realizedは8,800ドル(= 71,800 – 63,000)ということになります。

ただ、政府から無理やり資産を買い取られて、その譲渡で利益が出たからといって、その利益に対して法人税を課すのは、政府の横暴といいますか、なんだかLilac Corp. がかわいそうではないですか。あまりにも無慈悲。

そこで、一定の期間内(原則2年以内)に代わりの資産を購入した場合には、最初の資産の収用で生じた利益には、今の時点では課税しないようにしましょう、という制度が定められています。これが米国税法1033条です。

今の時点では課税しない、ということは将来のいつかの時点、具体的にはその新規取得資産を将来売却などする時点では、課税できるようにしておかなければなりません。そこで新規取得資産のbasisは、購入原価から繰り延べられた利益(この例でいうと8,800ドル)を差し引いて算出するわけです。basisを少なくしておけば、将来の売却時にその分だけ譲渡益が大きくなる、というわけです。

本問でも、新規取得資産の取得価額と、繰り延べられた利益がわかれば、新規取得資産のbasisが計算できます。繰り延べられた利益は上記のとおり、8,800ドルです。

新規取得資産の取得原価ですが、Exhibitsの”Letter from Greensburg Government”という資料の下の方に”Please note that we elected to capitalize the real estate taxes for tax purposes.”という記載があることから、”Combined Closing Statement”という資料に記載のあるCity/town taxes 2,563ドルについても、費用ではなく資産計上することになると考えられます。つまり、土地代70,000ドルと合わせて取得原価は72,563ドルとなります。

したがって、新規取得資産のbasisは、63,763 (= 72,563 – 8,800)となります。

今回は、新規取得資産の取得原価(72,563ドル)が収用価格(71,800ドル)を上回るケースでした。このような場合にはGain realized(8,800ドル)の全額が繰り延べられます。

一方で、新規取得資産の取得原価が収用価格を下回ることもあり得ます。今回のケースで、仮に新規取得資産の取得原価が70,000ドルであった場合、補償として受け取った71,800ドルのうち、1,800ドルは使わず手もとに残ったということになります。

1033条では、この場合には1,800ドルについて譲渡益を認識することが求められています(手もとに現金が残ったのだから、その部分については納税できるでしょう、ということですね)。

そうすると、新規取得資産のbasisはいくらになるでしょうか。

新規取得資産の取得原価は70,000ドルです。また、8,800ドルのgain realizedのうち、1,800ドルは繰り延べられずに現時点で認識され、課税されたわけですから、繰り延べられた利益(deferred gain)は、残りの7,000ドル(= 8,800 – 1,800)ということになります。

したがって、新規取得資産のbasisは、63,000(= 70,000 – 7,000)となり、結果として元の資産のbasisを引き継ぐことになります。

解説は以上です。

Involuntary conversionは、REGの中でも目立たない論点かもしれませんが、余力があれば試験前に内容をもう一度確認しておかれてはいかがでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の投稿者:

山本健介 1983年兵庫県加古川市生まれ。現在は大阪市城東区で税理士事務所を開業しています。税理士業界で10年以上、中小企業から上場企業まで会計・税務のお手伝いをしてきました。国際資格の専門校アビタス非常勤講師(USCPAコース担当)。米国公認会計士。お笑い好き。サッカー日本代表を応援しています。中国語勉強中。

米国公認会計士(USCPA)の関連記事

ご質問・ご相談はお気軽にお問い合わせください! 税務・会計やその他の会社経営に関するお悩みについて、なんでもご相談ください。

初回無料相談ご予約は

お電話からでも

山本健介税理士事務所電話 山本健介税理士事務所電話番号

インターネットからでも

山本健介税理士事務所電話お問い合わせフォーム