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その支払利息は損金算入できません!(過大支払利子税制)

過少資本税制の抜け穴

前回、過少資本税制について書きました。

過少資本税制とは、国外株主が日本法人に投資する際に、出資を少なく、貸付けの割合を極端に多くしてその支払利子を損金算入することにより、日本での租税回避を行うことを防止するための税制でした。

ただし、この過少資本税制には抜け穴があります。

貸付けの割合を出資に対して3倍以内に抑えれば、過少資本税制は適用されません。つまり、その割合を3倍以内に抑えた上で、貸付けの利率を高く設定すれば、外国親会社への支払利子をすべて損金算入できるということです。

たとえば、日本で設立する法人に1億円を投資する場合、2,500万円を出資、7,500万円を貸付けとして資金を投入したとします。最初の年に2,000万円の利益が出て、法人税等の税率を30%とした場合、貸付けの利率を10%としたとき(ケース3)と20%としたとき(ケース4)は以下のようになります。

ケース3 ケース4
利益 2,000 2,000
支払利子 △750 (*1) △1,500 (*2)
課税所得 1,250 500
税率 30% 30%
税額 △375 △150
留保額(配当前) 875 350

*1  7,500万円 × 10% = 750万円

*2  7,500万円 × 20% = 1,500万円

ケース3に比べると、ケース4は税額が225万円減少しています。このように親会社からの貸付けの利率を意図的に高く設定することにより、過少資本税制の適用を受けることなく、租税回避が可能となってしまいます。

(注:もちろん、移転価格税制が適用されて支払利子の損金算入が認められないケースも考えられます。移転価格税制とは、国外関連者との取引価格が第三者との取引価格(独立企業間価格といいます)に比較して高すぎる場合、又は低すぎる場合に発動される税制ですが、ここでは利率10%も20%も独立企業間価格の範囲内、つまり移転価格税制の適用を受けないという前提で進めます)

過大支払利子税制とは

このように過少資本税制の抜け穴を利用されて、意図的な貸付利率の設定による租税回避を防ぐため、平成24年度税制改正において過大支払利子税制が導入されました。

この税制が適用されますと、関連者純支払利子等の額(*3)のうち、調整所得金額(*4)の50%を超える部分の金額はその事業年度の損金の額に算入されません(措法66の5の2①)(ただし、翌期以後7年間繰り越すことができます(措法66の5の3))。

*3 関連者支払利子等の額から、これに対応する受取利子等の額を控除した金額

*4 所得の金額に受取配当等の益金不算入など一定の規定を適用せず、また、関連者純支払利子等の額の加算など一定の調整を加えた金額

上記ケース4にあてはめて考えますと、受取利息などはない前提で、調整所得金額は2,000万円、関連者純支払利子等の額を1,500万円とすると、

1,500万円 - 2,000万円 × 50% = 500万円

となり、500万円が損金の額に算入されません。

ケース4(過大支払利子税制適用)
利益 2,000
支払利子 △1,000(500は損金不算入)
課税所得 1,000
税率 30%
税額 △300
留保額(配当前) 200 (= 500 – 300)

適用されない場合

上記のとおり、過大支払利子税制は関連者純支払利子等の額が調整所得金額の50%を超える部分について適用があります。つまり、関連者純支払利子等の額が調整所得金額の50%以下である場合には、過大支払利子税制の適用はありません。

ただし、日本で事業を継続して行っていますと、毎年必ず利益が出るとは限りません。赤字の年もあるかもしれません。そのような年は調整所得金額がゼロになり、関連者純支払利子等の額の全額が損金不算入となってしまう可能性があります。

これでは、事業上の必要性から適正に利率を設定して外国株主から借入を行っている、租税回避の意図のないような日本子会社の支払利子まで損金不算入となってしまいます。

そのようなことにならないよう、2つの適用除外基準が設けられています。次のいずれかに該当する場合には、過大支払利子税制の適用はありません(措法66の5の2④)。

  • その事業年度の関連者純支払利子等の額が1,000万円以下であること
  • その事業年度の関連者支払利子等の額の合計額が、総支払利子等の額の50%以下であること

この適用除外基準の適用を受けるには、別表17(2)をその事業年度の法人税等確定申告書に添付し、かつ、計算書類等を保存しておかなければなりません(措法66の5の2⑤⑥)。

まとめ

以上過大支払利子税制について説明しました。

なお、過少資本税制と過大支払利子税制の両方の適用が考えられる場合には、損金不算入額の大きい方が適用されます(措法66の5④、66の5の2⑦)。

外国株主から日本子会社への投資手段として、貸付けは一般的に用いられる方法ですが、その利子の支払にあたっては、この過少資本税制、過大支払利子税制のほか、移転価格税制や源泉所得税の徴収もれなど気をつけなければならない点がありますので、後日になって税務当局から追徴課税されないよう、十分にご留意ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の投稿者:

山本健介 1983年兵庫県加古川市生まれ。現在は大阪市城東区で税理士事務所を開業しています。税理士業界で10年以上、中小企業から上場企業まで会計・税務のお手伝いをしてきました。国際資格の専門校アビタス非常勤講師(USCPAコース担当)。米国公認会計士。お笑い好き。サッカー日本代表を応援しています。中国語勉強中。

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