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株式会社と合同会社、どちらを選ぶか。

こんにちは。

大阪市の税理士、山本健介です。

 

今回は、個人事業主が会社を設立するとき、株式会社と合同会社のどちらを選ぶべきかについて書きたいと思います。

結論をまず言いますと、

 

・会社設立後も、ひとりで、または家族だけで経営していく → 合同会社でOK

・積極的に人を採用し、優秀な人には経営にも参画してもらって事業を拡大していく → 株式会社がよい

 

というのが私の意見です。

なぜそうなるのか、ご説明いたします。

 

設立費用は合同会社の方が安い

個人事業を数年続けて、順調に事業が拡大してくると、会社を設立しようと考えることがあると思います。

個人の屋号より会社としての方が、取引先の信用を得やすい、人を採用しやすいなど、それぞれ理由があるでしょう。

 

会社の設立について本を読んだり、人から話を聞いたりすると、まず設立費用の違いを知ることになります。

株式会社の設立には法定費用に少なくとも約20万円(定款認証5万円+登録免許税15万円+その他もろもろ)必要ですが、合同会社の設立には定款認証が不要であり、法務局での登記にかかる登録免許税も6万円ですみます。

この14万円の差を知ると、合同会社にしようかなと考える人も多いです。

 

ただし、株式会社と合同会社の違いは、設立費用だけではありません。

いちばん大きな違いは、「所有と経営が分離しているか、どうか」です。

 

合同会社は「所有者=経営者」を前提としている

例えば、次のようなケースを考えてみます。

 

====================

3年前に会社を設立して事業を経営している。

事業はこれまで順調に成長してきたが、最近少し伸び悩んでいる。

そんなときに、Aに出会った。

Aの持つ技術・経験は自分と補完しあっている。

なにより、Aの「この業界を変えたい」という想いが自分と同じで深く共感した。

「力を貸してほしい」というと協力してくれることになった。

自分と同等の能力があり、事業の成長をスピードアップさせたいので、Aにも会社を代表する地位に就いてもらうことになった。①

これでもっとたくさんの人たちに自分たちの製品・サービスを知ってもらえる!

ありがとう、A!

 

・・・・・・

 

さらに2年経った。

事業は成長したが、方向性についてAと意見が対立することも多くなった。

社内にはAを支持する派閥もできつつあるらしい。

社内の雰囲気は悪くなり、このままだと業績が落ちてくるのも目に見えている。

正直なところ、Aにはもう退任してもらいたい。②

最後にふさわしい報酬は用意している。

ただ、Aにそのつもりはないらしい。

どうすればいいんだろう。

====================

 

これは事例ですが、事業を経営しているとありえない話ではないと思います。

結局は他人同士ですから、最初は見えなかった考え方の違いが、時間が経つにつれて見えてくることもあるでしょう。

Aとしっかりと話し合って折り合いがつき、また一緒に前に進めればいいのですが、お互い人間ですので、ちょっとした誤解から感情がもつれ、修復できないほどに関係が壊れてしまうこともあるかもしれません。

 

株式会社であれば、取締役の選任・解任は、株主総会の決議によって行われます(会社法329条、339条)。

そのため、①のときに、株式は100%自分が保有したままで、Aを代表取締役にすることができ(自分とAの2人が代表取締役というかたちです)、②のときには、(会社法上は)自身の一存でAを解任することができます。

(不合理な決議により損害賠償の責任を負う可能性もあります)

 

合同会社であれば、どうでしょうか。

合同会社では、所有者(「社員」といいます)が直接会社を経営することとされています。

つまり、①で会社を代表する地位に就くには、会社に出資するなどして持分を取得し、社員となる必要があります。

この時点で、会社は自分の100%所有ではなくなります。

その後、②でAが自らその地位を辞さない場合、Aを除名する(会社法607条)手続きを検討することになりますが、それには会社法859条に定められた事由にもとづき、訴訟をおこすことなります。自身の請求が通らなければ、Aを退任させることはできません。

 

事業を拡大させるなら株式会社で

合同会社がよくないわけではありませんが、経営者であれば最悪のケースも想定はしておくべきでしょう。

上記の事例のような事態がおこりうるのであれば、「所有者(株主)」と「経営者(取締役)」を分けて組織を設計できる株式会社を選ぶ方が、経営しやすいと考えています。

逆に、個人事業の延長として、家族のみの経営で事業を行っていくのであれば、合同会社はそれに適しています。

ご自身の志向にあわせて、会社形態を選ばれるのがよいと考えます。

 

以上、税理士が慣れない会社法の話をさせていただきました。

株式会社と合同会社の詳細な違いについては、お近くの司法書士、弁護士の先生方にご確認ください。

なお、税務について、日本の国内税務の観点からは、株式会社と合同会社で特に大きな違いはありません。

(国際税務で少し合同会社に特徴がありますが、それはまた別の機会にお話しできればと思います)

 

会社設立についてご検討中でしたら、お話を伺ったうえ、提携の司法書士をご紹介いたします。

お気軽にお問い合わせください。

 

以上、株式会社と合同会社の違いについて、お話いたしました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

山本健介

(大阪市城東区、税理士)

この記事の投稿者:

山本健介 1983年兵庫県加古川市生まれ。現在は大阪市城東区で税理士事務所を開業しています。税理士業界で10年以上、中小企業から上場企業まで会計・税務のお手伝いをしてきました。国際資格の専門校アビタス非常勤講師(USCPAコース担当)。米国公認会計士。お笑い好き。サッカー日本代表を応援しています。中国語勉強中。

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