こんにちは、大阪市城東区の税理士、山本健介です。
「いくらくらい必要なのか?」
「ひとりでもできるものなの?」
自分でビジネスをゼロから起ち上げる(=起業する)ということは、誰にとっても簡単なことではありません。外国で起業をしようとすればなおさら、わからないことばかりだと思います。
今回のブログは、そんなあなた(=日本で起業しようとする外国人のあなた)のために、日本で起業するときの手続きについて書きたいと思います。
(はじめに)
外国人の方が日本で事業を経営するには、原則として「経営・管理」という種類の在留資格(以下「経営管理ビザ」といいます)を取得する必要があります。
この経営管理ビザですが、個人事業主では取得が難しいとされているため、このブログでは会社設立による経営管理ビザの取得について説明しています。
すでに在留資格があり日本に滞在している場合
あなたがすでに就労ビザや留学ビザなどの在留資格で日本に住んでいる場合、基本的には日本人と同じように会社設立手続きを進めることができます。
日本での会社設立手続きは、大まかにいうと以下のとおりです(株式会社を発起設立する場合)。
・会社の基本事項(※)を決定し、定款を作成する。
・公証人役場で定款の認証を受ける。
・銀行口座に資本金を払い込む。
・法務局で会社設立の登記申請をする。
※ 商号、本店所在地、事業目的、事業年度、資本金の額や発行する株式の数など
以上で会社設立は完了です。簡単ですよね?(^-^)
ちなみに定款というのは、上記の基本事項のほかに取締役の任期や株式の譲渡制限など、会社が事業活動を行っていく上での基本ルールを定めた書類です。
また、定款の認証とは、その定款の効力を発生させるために必要な手続きです。
これらの手続きについて、2.の定款の認証手数料として5万円、収入印紙代として4万円(ただし、電子定款の場合は不要です)、4.の登記申請に登録免許税が資本金の額の1,000分の7(その金額が15万円に満たない場合は、15万円)かかります。
また、1.の商号決定後には会社の印鑑を作成する必要がありますが、それにも一般的に2~3万円程度かかります。さらにその他の書類の発行手数料や交通費なども考えると、株式会社設立の手続き費用として25万円から30万円程度は必要となります。
このあと、日本人であれば税務署に法人設立届出書などを提出して事業を開始するわけですが、外国人であるあなたの場合にはその前にひとつ、手続きが残っています。
在留資格変更許可申請をして、在留資格を経営管理ビザに変更しなければなりません。
(なお、日本人の配偶者等の資格で日本に在留している方は、日本での活動に制限がありません。したがって事業の経営をする場合でも、経営管理ビザへの変更は不要です)
経営管理ビザへの変更にあたっては、満たさなければならない要件が2つあります。
ひとつは事業規模要件です。経営管理ビザを取得するためには、①日本に居住する常勤職員が本人以外に2人以上いる、または②資本金の額が500万円以上である、のいずれかの事業規模を満たさなければなりません。
事業の内容にもよりますが、起業したばかりですぐに2人採用する・・・というのは難しいのではないでしょうか。その場合は、最初の資本金の払込みを500万円以上で行う必要があります。
もうひとつの要件は、事業所の存在要件です。日本人(または日本人の配偶者等の外国人)であれば、自宅を事務所として会社を設立しそのまま事業経営することもできるのですが、経営管理ビザの取得が必要な外国人経営者の方は、オフィスを賃借するなどして自宅とは別に事務所を用意する必要があります。
この事務所についてですが、あくまで経営管理ビザの取得のために必要になります。ですので、会社設立の段階では外国人の方も自宅を本店所在地として設立登記をすることは可能です。ただし、そのあと在留資格変更許可申請をする前に、新たに賃借した事務所に本店所在地の移転登記をしなければなりません。
この移転登記には法務局の同一管轄区内であれば3万円、別の管轄区に移転する場合は6万円の登録免許税がかかりますので、できることなら会社設立のときから事務所を借りて本店とする方がよいと思います。
まだ在留資格がなく日本に住んでいない場合
以上日本に住んでいる外国人の方の会社設立・事業経営の方法について簡単に説明しました。
ただ、日本に住んではいなくとも、日本で会社設立をしてビジネスを始めたい外国人の方もいらっしゃると思います。
ここからは、日本に住んでいない外国人の方が日本で会社設立・事業経営をする方法について見てみたいと思います。
ひとりでは無理
いきなり結論から始めるようで申し訳ないのですが・・・このケースでは基本的にひとりでは無理で、日本で協力してくれる人が必要になります。
会社を設立しないと経営管理ビザは取得できない前提で話を進めていますが、会社設立をするには上記(会社設立手続きの3.)のとおり、資本金を払い込むための銀行口座が必要になります。
ただし日本では、中長期の在留資格(就労、留学など)を保有していないような、短期滞在で日本に来ている外国人は銀行口座を開設することができません。
したがって、過去に日本に住んでいたことがあり、そのときに開設した銀行口座がまだ残っている・・・というようなラッキーなひとでもない限り、ひとりで会社を設立することはできません。
時々、楽天にショップを開設してネット販売したい!という外国人の方がおられますが、楽天にショップを開設するには日本の銀行口座が必要→日本で銀行口座を開設するには日本での会社設立が必要→日本での会社設立には日本の銀行口座が必要、という負の無限ループにはまって断念される話を聞きます。
そのため、日本で銀行口座をすでに開設している知り合いを探して、協力してもらう必要があります。つまり、その口座を資本金の払込みに使わせてもらって会社を設立し、その後、その会社の株式を譲渡してもらうなどの方法をとれば、無事に自分の会社を設立することができます。また、会社が設立できればその会社の銀行口座を開設することができますので、その会社の口座に知り合いの口座から資本金を移すことができます。
こうして日本での協力者を見つけることにより、日本に住んでいなくても日本で会社設立をすることができますが、上記のケースと同様に、このケースでも、事業規模(従業員2人または500万円)と事業所の存在の2要件を満たさなければなりません。
まとめ
以上、外国人の方が日本で事業経営を始めるにあたって必要なこと、主に会社設立と経営管理ビザの手続きとお金のことについて見ていきました。
実際のところ、ビジネスは起ち上げるのも大変ですが、それを継続するのも大変だと思います。
経営管理ビザの取得に際しても、事業の安定性と継続性を説明するために、入国管理局に事業計画書を提出する必要があります。また、事業起ち上げ後赤字が続いたり、債務超過となっていたりする場合などには、経営管理ビザの更新が許可されないこともあります。
そうならないためにも、ぜひ計画的に準備を進めて頂いた上で、日本で事業を始めて頂ければと思います。
また、実際に日本で会社設立、経営管理ビザ等の取得をする際には、ひとりで行わず、できるだけ日本にいる専門家(行政書士等)のアドバイスを受けながら進めてください。
あなたのビジネスの日本での成功をお祈りしています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。