USCPA受験生向けの記事です。
こんにちは、税理士の山本健介です。
Basis算定の論点のひとつに、贈与により取得したpropertyのbasisの算定があります。
この中で、「損益の認識が行われず、basisの算定が不要」となるケースについて、最近受講生の方からご質問がありましたので、考察したことをメモしておきたいと思います。
まず、贈与により取得したpropertyのbasisについて、原則として、受贈者は贈与者のbasisを引き継ぎます。
これは、
basisというのはそのpropertyに対するこれまでの投下資本を意味し、同時に、そのpropertyが売却されたときに課税されない元本部分の金額を表す
その贈与時点のpropertyの公正価値(Fair Market Value or FMV)がbasisをどれだけ上回ろうとも、その贈与により贈与者に対して所得税は課されない
という2つの根拠によります。つまり、所得税が課されない贈与という行為の際には、現状をそのまま維持しましょう(basisをそのまま引き継いで将来の課税関係に影響を与えないようにしましょう)という理屈です。
しかしながら、どんなときも原則を維持すると課税庁にとって不都合なケースが出てきます。
例えば、FMV $6,000、basis $10,000のproperty、つまり含み損が$4,000あるpropertyを保有するA氏の知り合いに所得が$5,000あり税負担を減らしたいB氏がいるとします。
このとき、A氏がB氏にこのpropertyを贈与したとして、原則通りbasis $10,000で引き継がれたとすると、B氏は受贈後ただちにこのpropertyを時価で売却することにより$4,000の損失を実現し、その損失を$5,000の所得と相殺することによってその年の所得を$1,000に減らすことができます。
このような租税回避行為を防ぐために、米国税法ではこのような、贈与時のpropertyのbasisがFMVより大きく、かつ、贈与後の売却で損失が生じるようなケースでは、受贈者のB氏は贈与時のFMVをそのpropertyのbasisとしなければならないこととされています。
これを上記の例にあてはめると、B氏がpropertyを$10,500で売却したケースでは、売却益が発生しているのでbasisは$10,000を引き継ぎます。したがって売却益は、
10,500 – 10,000 = 500
となります。一方で仮にB氏がpropertyを$5,500で売却したケースでは、売却損が発生するため贈与時のFMVである$6,000をbasisとしなければなりません。したがってば一脚損は、
5,500 – 6,000 = △500
となります。
ここで問題となるのは、FMV $6,000とbasis $10,000の間で売却したケースです。仮に$8,000で売却したとして、原則通りbasisを引き継ぐものとすると、
8,000 – 10,000 = △2,000
の売却損が発生します。$5,500で売却したときの売却損は$500だけなのに、それより高い$8,000で売却すると$2,000もの売却損が発生するという矛盾が生じてしまいます。
逆に贈与時のFMVをbasisとすると、
8,000 – 6,000 = 2,000
の売却益が生じます。$10,500で売却したときの売却益は$500だけなのに、それより低い$8,000で売却すると$2,000もの売却益が発生するという矛盾が生じてしまいます。
このような矛盾を解消するため、米国税法では以下のように定めることにしました。
つまり、贈与時のbasisがFMVより大きい場合で、贈与後の売却額がそのbasisとFMVの間の金額であるとき、その売却時のpropertyのbasisはその売却額と等しいものとする、としました。
そのため、上記の例では、$8,000で売却したときのpropertyのbasisは$8,000、つまり売却損益は生じないものとされました。
Basis $10,000とFMV $6,000の間のどの金額で売却しても損益認識はなし、ですので、$9,999で売却したときは
9,999 – 9,999 = 0
ですし、$6,001で売却したときも
6,001 – 6,001 = 0
となり、いずれも売却対価=basis、つまり損益はゼロということになります。
このように贈与により取得したpropertyのbasisその後の売却損益によりbasisの金額が異なります。
なお、この論点はIRC section 1015に規定されています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。