日本に会社を設立するとき、資本金の額はいくらにしますか?
もちろん今から始めるビジネスの種類や規模によって、資本金の額を決めると思います。
でもそのとき、例えば少し知識があるだけで大きな金額を節約できるかもしれません。
法人税法の中小企業向け特例措置
日本では、資本金の額が1億円以下の法人には法人税法上、例えば以下のような特例が設けられています。
(「法法」は法人税法、「措法」は租税特別措置法、「措令」は租税特別措置法施行令、「地法」は地方税法を指しています)
・貸倒引当金繰入額を損金算入することができます(法法52①②)。
・欠損金等の控除限度額がありません(所得の金額の100%を控除できます)(法法57⑪)。
・法人税率について、課税所得のうち800万円以下の金額には15%の軽減税率が適用されます(800万円超の金額には23.4%(平成30年4月1日以後開始事業年度は23.2%)が適用されます)(法法66②、措法42の3の2①)。
・特定同族会社の特別税率(留保金課税)が適用されません(法法67①)。
・交際費等のうち年800万円以下の金額は損金算入できます(措法61の4②)。
・欠損金の繰戻し(1年)による還付が受けられます(法法80、措法66の13)。
・試験研究費について通常より優遇された税額控除が受けられます(措法42の4③)。
・中小企業等投資促進税制の適用が受けられます(措法42の6)。
・所得拡大促進税制の適用において通常より優遇された税額控除が受けられます(措法42の12の5)。
・取得価額30万円未満の資産をその事業年度に全額損金とすることができます(合計年300万円を限度)(措法67の5)。
・法人事業税において外形標準課税が適用されません(地法72の2)。
資本金の額が1億円以下の場合、以上のような特例措置があります。そのため法人税等の観点から考えると、資本金の額は1億円以下の方が節税になります。
中小企業向け特例措置が使えない場合
ただし、資本金の額が1億円以下の法人であっても上記の中小企業向け特例措置が使えない場合がいくつかあります。
そのひとつは、大法人に100%株式を保有されている場合です(法法66⑥二)。大法人とは資本金の額が5億円以上の法人をいい、外国法人も含みます。また「100%株式を保有されている」とは、直接保有の場合も間接保有の場合も含みます。判定時期はその事業年度の末日です。
このケースに該当すると、上記特例措置のうち1.から6.までの規定は適用できません。
また、同一の大規模法人(資本金の額が1億円超の法人などをいいます。外国法人も含みます)に株式の1/2以上を所有されている、または複数の大規模法人に株式の2/3以上を所有されている場合には、上記特例措置のうち7.から10.までの規定は適用できません(措令27の4⑬など)。
この場合の「所有されている」とは、直接保有のみで間接保有は含まないものとされています。
まとめ
日本に会社を設立するとき、資本金の額が1億円以下かどうかで法人税等の金額が大きく異なる可能性があります。また、資本金の額が1億円以下の場合でもその親会社やさらにその上の親会社等の資本金の額などによっては中小企業の特例措置の適用が受けられない場合があるので、注意が必要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(参考:国税庁HP)