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年末調整の留意点(1)対象者など

今年も年末調整の季節になりました。

こんにちは、税理士の山本健介です。

年末調整の季節というのは、11月から12月にかけて。

この時期は、木枯らしが吹いて急に気温が下がってあぁ、鍋のおいしい季節になったなぁとか、ポカポカした小春日和にそうだ、京都へ行こうとつぶやいて紅葉を見に行ってみたら同じ観光客だらけで結局疲れただけだったり、サッカーでいうとアジアチャンピオンズリーグの決勝やクラブワールドカップがあって楽しみな季節だったりしますが、税理士事務所にとってはこれから始まる半年間の繁忙期の第1ラウンドとなります。

年末調整とは、言わずもがな、事業主がお給料を支払う従業員さんたちに対して、1年の最後に行う所得税の精算手続きです。

アメリカなどではその1年間の所得が給与のみ、という個人も自身で確定申告を行いますが、日本の場合、そのような方は勤め先である会社(以下、個人事業主も含めて「会社」といいます。)が年末調整を行ってその年の所得税額を確定してくれることになっています。ですので、基本的に自分自身で確定申告をする必要はありません。

そもそも、ですが。所得税って、毎月給料明細から差し引かれてるよと思う方もいらっしゃるかもしれません。

あの、毎月の給与から控除される源泉所得税、あれは実は、仮の金額なんですね。その月の社会保険料控除後の給与額と扶養親族の数しか考慮されていません。

でも、実際の所得税の計算には、ほかにもいくつか考慮しないといけない項目があります。

それらを全部計算に含めてその1年の税額を確定させる、そして毎月の仮の金額として所得税を差し引きすぎていれば還付する、足りなければ追加で徴収するというのが年末調整という手続きです。

年末調整の対象となる人

ではどんな人が年末調整の対象になるのか。先ほどはざっくりと「従業員さんたち」と言いましたが、もう少し具体的に言うと、

・その会社の従業員で、会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出し、

・12月にお給料の支給を受けた、

・その1年間の給与総額が2,000万円以下の人

が対象になります。

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」というのは、通称「まるふ」といい、従業員さんが自身の扶養親族などを記載したA4一枚の書類です。仮に、その従業員さんがほかにメインの仕事があり給与を受け取っていて、そちらで年末調整を行う場合、この書類を提出する必要はありません。その場合、会社はこの従業員さんについて年末調整を行う必要はありません(そのような方には、「まるふ」に代えて、「従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらいます)。

12月支給の給料を受け取っていない人、つまりそれまでに退職された方についても年末調整の対象とはなりません。なお、その退職された方が年内に別の会社に転職された場合、その会社で年末調整が行われます。また、年内に転職されなかった場合はその方が自身で確定申告を行うことになりますが、いずれにしても前職の源泉徴収票が必要になりますので、退職後すみやかに(遅くとも転職先の会社で年末調整関係書類の提出が行われる11月頃までに)源泉徴収票を発行して渡す必要があります。

なお、まれにどのようにして入手したのか、退職された方の生命保険料などの控除証明書をまるふに添えて税理士事務所に送ってこられる方がいらっしゃいますが、退職者について年末調整は行いませんので、生命保険料などの控除証明書の送付は不要です。

最後に、その1年間の給与総額が2,000万円超の人は、確定申告をする義務がありますので、年末調整は不要とされております。

年末調整でできること

さて、年末調整と先ほどから繰り返しておりますが、何を年末に調整するんでしょうか。というと、それはその1年の所得税を調整する、ということになります。

ではどういった調整項目があるのか、を見てみたいと思います。

主なものは次の5つです。

・国民年金保険料の控除

・国民健康保険料等の控除

・生命保険料の控除

・地震保険料(旧長期損害保険料)の控除

・住宅ローン控除(2年目以降)

国民年金保険料の控除

その年に入社された従業員さんで入社前の期間に納めた国民年金保険料がある場合、またはその年に納めた家族分の国民年金保険料がある場合は、年末調整によりその納めた金額を所得から控除することができます。この場合、日本年金機構から送られてくる国民年金保険料の控除証明書が必要となります。

国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料の控除

その年に納めたこれらの保険料も年末調整により所得から控除することができます。これらの控除については、納付したことを証明する書類の添付は必要ありません。

生命保険料の控除

生命保険の保険料は、所得税の計算において一般(遺族補償等)、介護医療(介護保障、医療保障)、個人年金(老後保障)に分けられます。一般、介護医療、個人年金それぞれ最大で4万円、つまり合計12万円まで所得から控除することができます。これらの控除を受けるには、生命保険会社から送られてくる控除証明書の添付が必要です。

地震保険料(旧長期損害保険料)の控除

地震保険料は最大5万円、旧長期損害保険料は最大15,000円の控除があります。これらの控除を受ける場合も、損害保険会社から送られてくる控除証明書の添付が必要です。

住宅ローン控除(2年目以降)

正式名称は「住宅借入金等特別控除」といいますが、この控除も年末調整で行うことができます。ただし、住宅を購入した(つまり、住宅の引渡しを受け、借り入れを行った)初年度の住宅ローン控除については年末調整で行うことができず、確定申告が必要です。

1年目に確定申告を行うと、2年目に税務署から「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」が送られてきます。それと、毎年住宅ローンを行った金融機関から送られてくる「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を添付して年末調整を行います。

この住宅ローン控除は上記4つと異なり、所得に税率を乗じた後の税額から控除される税額控除に分類されます。控除できる金額はその借入れを行った年により異なりますが、平成30年に取得した人であれば借入金等の年末残高の1%(40万円限度、ただし認定長期優良住宅は50万円限度)となります。

なお、年末調整はその年の12月に給料を支給された会社で行いますので、年の中途で入社し前職がある従業員さんについては、前職から発行された源泉徴収票を提出してもらう必要があります。その源泉徴収票に記載された給与総額、社会保険料控除額、源泉徴収税額を自社の給与と合算して年末調整を行います。

年末調整でできないこと

年末調整でできないことは色々ありますが、主には次の3つです。

・医療費控除

・寄附金控除

・配当控除

医療費控除と寄附金控除は所得からの控除です。医療費はその年の医療費を多く支払った場合にその医療費の一定額を所得から控除できる制度です。これもまたまれに年末調整書類の中に医療費の領収書が紛れ込んでいることがありますが、医療費控除は確定申告でしかできませんのでご返送させていただくことになります。

寄附金控除はその年に寄付をした場合に一定額を所得から控除する制度で、ふるさと納税が有名です。ふるさと納税にはワンストップ特例という確定申告を行う必要のない制度がありますが、その要件に該当しない方の場合には確定申告を行って寄附金控除の適用を受けることになります。

配当控除はその年に保有する株式等からの配当を受けた方で、その配当受領時に源泉徴収された所得税を、税額計算から控除する制度です。配当受領時に一定額(上場株式等に係る配当等であれば所得税15.315%、住民税5%)が控除された源泉所得税は、その年の所得税の前払いと考えることができますので計算時に税額控除の適用が受けられます。この控除は年末調整では受けることができず、確定申告を行う必要があります。

まとめ

以上、年末調整の留意点について見てきました。

と言っても、所得控除は物的控除のみで人的控除にはまったく触れていませんでした。

人的控除というのは、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、障碍者控除、勤労学生控除、寡婦(寡夫)控除、基礎控除のことで、自身や家族の年収等の状況に応じて受けられる一定の控除のことです。

これらについてはまたいずれ、日を改めてご紹介できればと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の投稿者:

山本健介 1983年兵庫県加古川市生まれ。現在は大阪市城東区で税理士事務所を開業しています。税理士業界で10年以上、中小企業から上場企業まで会計・税務のお手伝いをしてきました。国際資格の専門校アビタス非常勤講師(USCPAコース担当)。米国公認会計士。お笑い好き。サッカー日本代表を応援しています。中国語勉強中。

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